【報告】コロナ禍のメディアとわたしたち

人権まちづくり講座 【ワークショップ】コロナ禍のメディアとわたしたち 報告

 新型コロナウイルスの感染対策で「ステイホーム」が強いられて、生活にメディアの占める比重は一層高くなっています。では、そのメディアとは何なのか、どう向き合うか、について学ぶため、2回のメディア・リテラシー講座が企画されました。

第1回目 入門編「日常のメディアとどう向き合うか」(820日 14時〜16時) 

 <主な内容>

 ・「メディア・リテラシーとは?」田島知之

 ・ワークショップ「ニュース番組はどう構成されているか?  西村寿子

   〜「日本型接触アプリ明後日導入」を使って(2020年6月17日ニュース23)

 メディア・リテラシーとは?

 8月20日には、猛暑の中を高校生から80代の方まで20人近くが参加しました。

 前半は、田島知之さんから「メディア・リテラシーとは?」というテーマで、①定義②基本概念の1と2、③分析/学びのスタイルについて、分かりやすく説明してもらいました。メディアの要素を分かりやすく示した8つの基本概念がありますが、特に重要な基本概念1は「メディアはすべて構成されている」です。これは、事実をそのままに映し出しているように見えるニュースやドキュメンタリーも含めてメディアは、人が作ったものであるということです。ニュース番組も登場人物、その発言、背景、データなどを巧みに組み合わせています。したがって、メディアは現実を映し出す鏡ではありません。

ワークショップ「ニュース番組はどう構成されているか?

 後半では、実際にニュース番組の一部を分析対象にして、基本概念の1「メディアはすべて構成されている」に着目してワークショップを行いました。この日選んだのは、「日本型接触アプリ明後日導入」(2020年6月17日ニュース23)です。

 4月7日に出された政府の緊急事態宣言が5月25日に解除されて以降、6月19日には県境を越えての移動の自粛も解除されるというタイミングで政府は、接触アプリ「COCOA」の導入をしました。ニュースを見ながら各人が記入シートにメモを作り、そのあとグループごとに用意した「問い」に沿って話し合いました。そこで出された意見を少し紹介しましょう。

・登場人物は、大臣や専門家は全て男性。スマホを使用しない高齢者、障害者、外国人は登場しない。

・中国やオーストラリアの接触アプリに比べて日本のアプリは、個人情報を提供することなく、接触情報も暗号化されるから個人情報に配慮されているという、一見、安全性が具体的に語られている。一方、不安はテロップなどでも「赤字」になったり強調されているが、具体性に乏しい。結局、この番組は日本型アプリを推奨しているのではないか。

第2回目 やってみよう!編「監視社会を考える」(827日 14時〜16時)

<主な内容>

 ・「個人情報とは?」五十里元子

 ・ワークショップ 「監視社会を考える〜カナダ・クイーンズ大学監視研究センター

            短編作品「ブラックサイト(Blaxites)」を使って 藤井令子

個人情報とは?

 第2回目は、16人の参加者でした。前回を受けて、私たちの情報に対する権利、「監視社会」についてより深く学びました。最初に五十里さんが、デジタルメディア社会において個人情報がいかにたやすく収集され、晒されるのかについて具体例を挙げながら説明しました。

ワークショップ 「監視社会を考える」

 続いて藤井さんの進行でワークショップを行いました。使用したのは、短編作品「ブラックサイト(Blaxites)」です。これは2019年にカナダ・クイーンズ大学監視研究センターが、ビッグデータによる監視の結果、生じる可能性のある社会とプライバシーについて表現した作品です。この作品を含め3作品に日本語字幕がつけられて公開されています。ぜひご覧になってください(https://www.screeningsurveillance.com)。

 ワークショップでは、参加者が映像を見ながら映像や音声に着目しながら記入シートを使ってメモを取り、それにもとづいてグループで話し合いました。今回も、参加者からは多様な意見が出されました。

・色調に白と黒が多用されており、作品の社会が2者択一以外の選択肢がないことを表している。

・作品に登場するジェイは、システムの中で生きていることにも気づかずに無意識に行動していることがトラブルを招く。彼女は、アプリを使いこなしているように見えるが、SNSの機能や社会的文脈について何も知らずに無防備である。

 最後に、2回の活動を踏まえて、監視や監視社会について考えたこと知りたいことについて考える時間を持ちました。

 参加者のお一人からは「70歳を過ぎて目が覚めた。ニュースの見方が変わった」という感想をいただきました。講座では、人と人が対話をすること、多角的にものを見ることによる気づきがエネルギーになるということを改めて実感しました。

<参考文献>

・鈴木みどり編『最新 Study Guide入門編』(リベルタ出版、2013年)

・カナダ・クイーンズ大学監視研究センター  https://www.screeningsurveillance.com

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