「手」

あの日

あなたは二十一歳

はじめて 手を握ってみたら

「痛ッ!」と

あなたは悲鳴をあげた

おどろいて離したあなたの手は

霜焼けで

赤く腫れあがっていた

結婚して・・・・・

翌年

爆弾のとどろく中で

女の子ができた

それから・・・・・

男の子ができて

また

男の子ができた

上の娘は

もう十八になった

男の子たちも大きくなった

もう すぐ

正月がやってくる

今夜も あなたは

就寝やすむまえに

手のヒビわれに

クリームをすりこむ

カサ カサ カサ

静かな

夜だ―

(一九六三年師走の夜)